腫瘍科 / 実績・患者様の声

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腫瘍科における診断・治療実績

再発したリンパ節転移を伴う大型の高悪性度肥満細胞腫の犬の1例

犬、パグ、11歳、メス、10kg。
かかりつけ医で肥満細胞腫の切除手術を受けたが、再発し、急激に増大した。腫瘍からの出血と排膿が続くため、その治療を求め紹介来院。

診断と治療

腫瘍は15cm近くに達しており、中心は壊死し出血と排膿していた。多発性にリンパ節は腫大しており、原発及びリンパ節から肥満細胞が多数採取された。胸部X線検査・腹部超音波検査で明らかな肝臓・脾臓・リンパ節転移は確認されなかった。
ご家族は、出血と排膿を止めてあげたいとの希望で、また断脚手術は避けたいとのことなので、内科治療で改善を目指した。分子標的薬トセラニブを使用した所、腫瘍は縮小し出血もおさまった。
腫瘍が縮小させた後、左前肢を残し手術を行った。病理組織学的検査で、複数のリンパ節転移を伴うグレードIII/ high グレード肥満細胞腫と診断された。
以後も複数の抗がん剤を組み合わせて治療を行い、一般状態は良好で現在まで再発なく1年以上経過している。

考察

犬のhighグレード肥満細胞腫は、半分以上が4ヵ月で亡くなってしまう非常に悪性度の高い集学的治療が考慮される疾患である。近年、分子標的薬という新規薬剤が良好な反応を示すことがわかり、本症例も著効した。本来であれば断脚手術は避けられない状況であったが、薬剤治療などをうまく組み合わせることで、前肢を温存し再発なく腫瘍を良好にコントロールできている。肥満細胞腫治療の選択肢は数多く存在するが、その適切な判断が重要になると考えられた。

下顎メラノーマに積極的な治療を行なった老齢犬の1例

犬、Mix犬、16歳、オス17kg。
口腔内下顎にしこりができ、急激に大きくなっているとのことで来院。

診断と治療

腫瘍は4cm以上で左下顎前臼歯領域にかけて存在し一部自壊・出血が認められた。パンチ生検を行い、各種検査にて転移は認めなかったことから、悪性黒色腫(メラノーマ)Stage 3と診断した。
腫瘍は急激な増大を示し、出血と疼痛を呈するようになった。ご家族は外科的な切除を望まれたため手術を実施した。
症例は高齢であり、軽度腎機能低下があったことから、慎重な麻酔管理を行った。観血的血圧測定及び血液ガス管理を行い、強心剤・麻薬系鎮痛剤を併用して術後も集中管理を行った。
手術は大きな合併症を認めることなく、左片側下顎切除で腫瘍は完全切除となった。同時に切除した下顎リンパ節に腫瘍細胞は認められなかった。また麻酔からも良好に回復し、翌日には食事をとって2日後には退院となった。
症例は約1年後に老衰で亡くなったが、それまで良好に食事可能であり、局所再発や転移を認めることなく良好に経過した。

考察

犬の口腔内は悪性腫瘍がよく発生する場所である。中でもメラノーマは急激に大きくなる事が多く早期に自壊・壊死・出血を呈し生活の質が著しく低下する。転移しやすい一方で、完全切除によってコントロールも可能であり早期発見・早期治療が望まれる。近年、本症例のように高齢であっても麻酔技術の向上でより安全な手術が可能になっている。良好な周術期管理によって腫瘍の根治が達成できたものと考えられた。

持続性の出血により貧血となった小腸平滑筋肉腫の犬の1例

犬、トイ・プードル、11歳、オス、6kg。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)で、治療反応悪く予後不良と診断されたとのことで、セカンドオピニオン来院。

診断と治療

来院時、主訴の重度貧血を認めた。しかしながら、血液検査においてIMHAの所見に乏しく貧血のタイプが異なることから診断を見直すこととした。
当院で超音波検査を実施した所、小腸に3cm大の腫瘤を認めた。糞便検査にて重度の潜血反応を示し、血液検査にて血清鉄値の著しい低値を認めた。以上から、小腸腫瘤とそこからの出血及び鉄欠乏による非再生性貧血と診断した。
輸血などの支持療法を行い、小腸腫瘤を切除した所、一般状態及び貧血は良好に回復した。小腸腫瘤は悪性の平滑筋肉腫との診断であったが、完全に切除されており、リンパ節などに転移もなかったことから経過観察とした。
現在、貧血は改善したままで、腫瘍の再発、転移を認めずに術後1年以上良好に経過している。

考察

悪性腫瘍に罹患すると出血や血球破壊、免疫異常など様々な原因で貧血を呈する。そのアプローチには血液検査結果の慎重な判定や、骨髄検査や画像診断など総合的解釈が求められる。犬では免疫介在性溶血性貧血も良く認められる疾患であり、貧血は重篤な病態であることから正確で早急な診断が必要である。
小腸腫瘍は稀に持続性や急性の出血を呈し、腫瘤が小さい場合は見逃され血液疾患の貧血と診断されることもあるため注意が必要である。腫瘍の診断には内科・外科共に鑑別診断を立てる総合診療的考察が大切と考えられた。

緊急手術にて救命した心臓右心房血管肉腫の犬の1例

犬、ゴールデン・レトリーバー、10歳、メス、38kg。
元気食欲の消失後、虚脱状態になりかかりつけ医を受診。心タンポナーデが疑われるとのことで当院夜間緊急に紹介来院。

診断と治療

来院時、症例は心音微弱であり虚脱状態であった。酸素吸入下で迅速に心臓超音波検査を実施し、多量の心嚢水と右心房自由壁に腫瘤病変を認めた。エコーガイド下で多量の血液様の心嚢水を抜去したが、数分で同程度の再貯留が確認された。
以上より心臓右心房自由壁腫瘤病変の破裂による心臓タンポナーデと診断した。外科手術以外の救命手段はないと考え、ご家族と相談し緊急手術とした。
開胸、心膜切開後、血液が心臓より噴出するのを確認した。サテンスキー血管鉗子で緊急的に止血後、腫瘤を可能な限り切除して連続縫合で右心房を再建した。出血が大幅に減少し安定したため手術終了とした。病理組織学的検査は血管肉腫の診断だった。術後は大幅な合併症なく、4日目に退院となった。術後2ヵ月で症例は肺転移を認め亡くなったが、それまで臨床症状なく良好な生活が送れた。

考察

犬の心臓腫瘍は腫瘍からの出血で心タンポナーデになり急激な状態悪化を呈すこと多く、時に心臓破裂による突然死を起こす。今回、緊急手術によって致命的状態から救命することができた。リスクを伴う手術ではあるが、術後大幅な改善が望め、ある程度の期間良好なQOLを維持することができるため、実施する価値は十分あるものと考えられた。近年、手術や新規薬剤の登場で心臓腫瘍の治療選択肢が増加しており、治療成績の改善が期待される。

多剤併用療法で長期生存している縦隔型リンパ腫の猫の1例

猫、日本猫、3歳、メス、5kg。
元気・食欲が低下し、急に呼吸が粗くなったとのことで来院。

診断と治療

来院時、呼吸困難で開口呼吸を呈していた。酸素吸入下で各種画像検査を実施した所、多量の胸水貯留が認められた。エコーガイド下で慎重に赤色に混濁した胸水を抜去すると呼吸状態は改善した。
胸水検査にて異常な形態を示す多数のリンパ芽球様細胞を認め、レントゲン検査にて前縦隔に腫瘤を認めた。その他臓器に以上は認められなかったことから縦隔型リンパ腫と診断した。
L-アスパラギナーゼ、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロフォスファミド、ドキソルビシンなど多種類の抗がん剤治療を実施した。症例は化学療法に良好に反応を示し、早期に寛解導入が得られた。治療クール終了後、慎重に経過観察を続け、現在4年以上経過しているが明らかな再発や新規リンパ腫病変の発生なく良好に経過している。

考察

リンパ腫は猫で最も多く認められる悪性腫瘍の一つである。治療を行わない場合、1ヵ月程度で斃死してしまう症例が多く、早期の診断と治療が必要である。血液腫瘍であるため、全身療法である抗がん剤治療を用いる。薬剤の適切な使用が重要で種類・投薬量の選択と副作用の慎重なモニターが必須である。本症例は、大きな副作用を認めることはなく治療に良好に反応し、長期間寛解を維持している。

紹介症例を検討されている動物病院様へ

現在当院では、各種腫瘍症例のご紹介を受け付けており、各種診断・手術・抗がん剤治療などを実施しております。体表腫瘍から、頭頸部・胸部・腹部腫瘍まで幅広く対応しており、化学療法剤も多種類用意しております。また診断がついていない消化器症状、泌尿器症状、神経症状症例や貧血などの血液検査異常を示す内科・外科症例の原因診断・治療の紹介も承っております。また当院で対応が難しい、より専門性の高い放射線治療や手術、画像診断が必要な場合は適切な施設へご紹介させて頂きます。

検査・診断後、当院より報告書と検査データをご連絡させていただきます。当院では飼い主様、紹介医様と3者で十分に話し合い、ご家族が安心して治療を受けられるよう心がけております。名古屋地域の獣医療の発展のため日々、努力を続けてまいります。

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