循環器科
心臓病を放置した場合
各器官への影響
心臓の機能が落ちたとき、さまざまな器官に影響が出てきます。
脳神経系への影響
脳は常に豊富なエネルギーと酸素が必要な臓器です。心機能が低下すると脳血流が滞り、失神やけいれんなどの症状を起こしやすくなります。
失神/けいれん
腎臓への影響
腎臓は血液中の老廃物を尿として捨てている臓器で、心臓病の影響を受けやすい臓器の1つです。心機能が低下して腎血流が減少してしまうと、老廃物や水分が体内に蓄積し、尿毒症を生じます。尿毒症を生じると活力低下、食欲不振、嘔吐、胃腸障害、下痢、脳症状など全身にさまざまな悪影響が出ます。腎血流不足による腎機能障害が進行する一方、腎臓そのものも酸素不足により傷害され、次第に慢性腎不全へと移行します。
尿毒症が生じることによる活力低下/食欲不振/嘔吐/胃腸障害/下痢/脳症状/慢性腎不全
肝臓への影響
肝臓はタンパク質の合成やエネルギーの貯蔵・分解・合成、有害物質の解毒、胆汁分泌など、たくさんの大切な働きを行っている臓器です。肝臓は心臓から送り出される血液の1/4もの量が供給されているため、心機能が低下すると容易にダメージを受けます。また肝臓は心臓との位置が近いため、心臓病の影響を受けやすくなっています。
右心不全では血液が心臓に戻りにくくなり肝臓に血液がうっ滞して肝腫大がおこります。これをうっ血肝と言います。心臓から十分に血液が送り出せず、肝臓に血液が留まることで肝臓が酸素不足となり、肝細胞は障害を受けます。その結果、血液検査で肝臓の項目に異常値が出る場合があります。
うっ血肝によって肝臓に酸素や栄養が供給されずに破壊されることにより、肝機能が正常に働かなくなり、重篤な肝不全や肝硬変へと移行すると黄疸・肝性脳症や腹水などといった症状まで出現します。
うっ血肝/重篤な肝不全/肝硬変
皮膚・体毛・筋肉
心臓が正常な場合、心臓が送り出す血流は体全身にくまなく行き渡ります。しかし、心臓病が進行して心機能が低下すると、心臓が送り出す血流はなるべく脳・腎臓・肝臓などの生命維持に必須の臓器に分配されるようになり、皮膚・体毛・筋肉などの血流が犠牲になります。
そのため、慢性心不全になると皮膚のハリやみずみずしさがなくなり、カサカサと乾燥し、体毛は薄く、毛ヅヤが悪く、筋肉はやせ衰え不健康な見た目になり、たいていは年齢の割に老けて見えます。皮膚病にもかかりやすくなります。
皮膚のハリやみずみずしさがなくなり乾燥する/体毛が薄くなる/皮膚病
胃や腸などの消化管
胃や腸などの消化管にも血流は必要です。心機能が低下して血流が滞ると消化吸収が悪くなり、下痢や嘔吐症状が見られる場合があります。便の中の細菌バランスの乱れが生じ、感染性の下痢なども多く認められるようになります。
下痢/嘔吐症状
歯や口腔
心臓が悪い動物は歯石がたくさん付着しており、よだれの汚れやにおいがひどい場合がかなり多いです。心臓が悪いと歯石が付きやすくなってしまうのでなく、心臓が悪いために歯科処置が危険と判断され、敬遠されてしまうためです。心臓が悪いと、歯磨き中や歯石除去の処置中にも症状が急変しかねません。
歯石がたくさん付着する
症状が軽い場合
多くの循環器疾患では、軽度であれば内科療法でも十分に症状をコントロールすることが出来ます。
一般的に内科治療は投薬を行うということだけではなく、減塩食へ切り替える、過度な運動や興奮を抑制する、暑熱寒冷を避けるなどといった生活スタイルの見直しが含まれています。
また、定期的に心臓検査をし、心臓病の進行の確認をします。
心臓病の悪化
スピードについて
心臓病の悪化スピードは、動物によってそれぞれ違います。
軽症時は内科治療から始めますが、心臓の肥大が現れてきたら強心剤の内服薬による治療が開始され、状況に応じて血管拡張剤などその他の薬剤も随時併用していきます。
肺水腫が発生した場合には、利尿剤の投与や入院での酸素投与などを行います。
しかし内科治療は障害を受けた僧帽弁自体を治すことや、弁の障害の悪化を食い止めることは不可能であるため、完治を目指すには外科治療(手術)が必要となります。外科治療は肺水腫の危険性の高い動物など、中等~重症の動物が適応となります。
獣医師に「心臓病」であることを告げられても動物が元気いっぱいに走り回っているのは、「心臓の代償能力」でまかなっているためです。もし、しだいに心臓病で考えられる症状が現れた場合は、代償能力ではまかないきれないほどにすでに病状が悪化してしまった証拠で、重症になってしまっています。そうならないためにも定期的な心臓検査で心臓病の進行を確認します。
かかる治療費
当院では、心臓検査や心臓病手術・入院についての費用を明確に提示しておりますので、料金表をご確認ください。
不安なことや分からないことは診察時にお気軽にお尋ねください。
心臓検査を
受けてみましょう
心臓検査では、以下のような検査を組み合わせて病気やステージを正確に診断します。
心臓の音が正常かどうか、雑音が聞こえる場合はその大きさや位置を調べます
心臓が拡大していないか、肺水腫になっていないか、腹水や胸水はないかを調べます
心臓病のマーカーを測定、心臓以外の臓器機能も評価します
心臓が血液をポンプのように送り出す際の状態、血管の収縮・拡張の状態を調べます
心臓の動きのリズムなどを確認し、不整脈があるかどうかの診断をします
心臓の断面や動きをリアルタイムで見て構造的な異常や心機能を評価します
当院では国内最高クラスの循環器検査機器を備え、それぞれの検査によって得られた結果の解釈は、高度な専門知識を有する経験豊富な専門スタッフが行います。麻酔や動物に大きな侵襲を伴う検査が必要になることはまれで、安心して検査を受けていただくことが出来ます。
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