各診療科紹介

総合診療科

食欲や元気がない、いつもと何か様子が違うと感じたら

総合診療科は、動物たちが出す「何気ないサイン」をもとに病気を見つけていく診療科です。なんとなく元気がない、いつもと様子が違う、など、何かお気づきのことがありましたら、些細なことでもご相談ください。

動物は言葉を話せません。しかし、健康上の問題がある場合、必ず何かしらのサインを飼い主様に送っています。上記にあげた以外にも、普段は喜んで行く散歩に今日は行きたがらない、歩きたがらないなどがあげられます。

愛犬、愛猫のちょっとした異変を察知するには、普段の元気なときの愛犬の姿をよく知ることが何より大切です。そのためにも観察力を磨き、いざ病気になってしまったときのためぜひ早期発見につなげていきましょう。

こんな症状が出たら総合診療科へ

犬、猫に元気がないとき、まず考えられるのは体のどこかに不調をきたしているということです。発熱、下痢、嘔吐、ケガなどさまざまな症状や出来事がサインとなります。そして人と同じように精神的なストレスから体が不調になることもあり、雷や花火など大きな音に対する恐怖心から元気をなくす犬もいます。

一時的に症状が出ただけで翌日にはケロッと元気にしている場合もありますが、症状がひどくなったり、続いたりする場合、その裏に大きな病気が隠れている危険性も考えられます。早期発見・早期対策が大切になりますので、お気軽にご相談ください。

泌尿器科

血尿が出る、頻繁にトイレに行くが少量しか出ないときは

血尿が出る場合やトイレに行く回数が増えるなどの症状は、腎臓や膀胱の病気にかかっている可能性があります。また、腎臓病に関しては少しずつ元気や食欲が低下していく、といったあいまいな症状の場合もあるため注意が必要です。特に下記の症状がある場合は、できるだけ早急に獣医師に相談してください。

腎臓・膀胱の病気が疑われる症状

重度の貧血が考えられます。「貧血」というと立ちくらみのような軽い症状を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、それは誤解です。貧血とは、酸素を運ぶ役割をしている赤血球が少なくなり体に酸素が行き渡らない状態のことを指します。重症に至ると命にかかわるため注意が必要です。貧血の原因としては、玉ねぎを誤って口にしたことで中毒症状を起こしている可能性や、免疫にかかわる病気を患っていることなども考えられます。

腎孟腎炎や前立腺炎、膀胱腫瘍や前立腺腫瘍が原因となり、泌尿器のみならず、全身へ強いダメージを与えている可能性があります。ぐったりしている場合はそれ以外の病気の可能性も考えられるため、すぐ病院へお連れください。

生理もしくは血尿だと思っていたものに膿が混ざっていると、子宮蓄膿症にかかっている場合があり一刻を争います。これは子宮の中に膿がたまる病気で、悪化するとたまった膿で子宮がパンパンになります。病態が進行すると死に至るので、早期治療が必要となります。避妊をしていない子で血尿が出た場合は、早急にご相談ください。

前立腺という男の子だけにある生殖器が細菌などに感染しておこる「前立腺炎」になると血尿になります。激しい痛みを伴う病気ため、早めに病院にお連れください。

おしっこの量が非常に少ない場合、結石や腫瘍などが尿道をふさいでしまう尿道閉塞を起こしている可能性があります。完全に尿道が詰まってしまうと体内の毒素を排出できず、数時間で全身状態が悪化する可能性もあり、命に関わります。一刻も早く病院で診てもらう必要があります。

一般的な手術から高度な手術まで対応しています

  • 尿管結石摘出術
  • 腎瘻チューブ設置
  • 膀胱切開術
  • 会陰尿道造ろう術
  • 膀胱腹壁ろう術
  • 腎嚢胞エタノール注入

皮膚科

皮膚病のリスクは至るところに存在します

犬の皮膚病は、動物病院に来院する理由の中でもっとも多い病気です。それだけ犬にとっては身近な病気です。症状によっては早急な対応が求められます。

皮膚が赤くなる原因と考えられる病気

皮膚が赤い場合は、細菌感染やアレルギーなどの症状が考えられます。皮膚が赤いと感じた段階で獣医師に相談してください。この場合に考えられる病気を一覧でご紹介いたします。

食物、ハウスダスト、寄生虫、植物などが体に取り込まれたり、体と接触することで起こります。症状が悪化する、外だと症状が出やすい、家の中だと症状が出やすいなどの規則性があることもあります。動物病院ではアレルギーチェックが20,000円〜30,000円でできますので、一度動物病院で診てもらうことをお勧めします。

健康な皮膚にはもともと常在細菌がいますが、これが何らかの原因で増えてしまう状態です。原因はアレルギー、不適切なシャンプーによる皮膚のバリア機能の低下、不衛生な環境などがあります。細菌が増殖している状態ですので、においがいつもよりきつくなります。

マラセチアなどのカビが増えた状態です。これも細菌感染と同様の原因で起こります。カビの種類によっては痒みを伴わないものもあります。

ニキビダニや疥癬(かいせん)といった皮膚の寄生虫がトラブルを起こします。

精神的なことから足先などを過剰に舐めてしまい、赤く炎症を起こします。舐めてその周囲の毛が濡れていたり茶色に変色することがあります。

どこかにぶつけたなどの外傷によるものや、止血異常によるものがあります。皮膚に褐色の大小さまざまな斑点のようなものが見られ、痒みはないため本人はほとんど気にしませんが、重度の場合は貧血などが認められ、命に関わることもあります。

頭をよく振る・耳をかく仕草から考えられる病気

愛犬が頭をよく振ったり、耳をしきりに引っ掻く場合は外耳炎の場合があります。外耳炎とは、外耳という耳の奥へと続く通路が炎症を病気です。原因は細菌や真菌による感染が主で、耳垢が原因になる場合もあります。当院でも多くの犬が外耳炎で相談に来られます。

消化器科

下痢や嘔吐の症状がみられるときは

吐いたり、下痢をしていたり、食べる量が少ないといった症状は消化器に異常がある可能性があります。消化器科では主に胃腸の病気に対応しており、犬や猫によく見られる、急な吐き気、下痢などの病気の治療をします。消化器の病気は主に嘔吐、下痢などの症状があげられますが、中には食欲がない、なんとなく元気がない、などといったあいまいな症状の場合もあります。

また病気の種類も多く、重症度も異なるため、思わぬ大きな病気が潜んでいる場合もあります。当院では内視鏡の設備もあるため、異物誤食などの際には開腹手術をすることなく摘出することが可能です(形状や大きさによって、摘出できないことがあります)。

注意すべき嘔吐の症状

犬やネコはよく吐き戻すことがありますが、吐き戻す原因は軽重さまざまです。吐く原因として空腹や食べ過ぎ、環境の変化などによるストレス、乗り物酔いといった軽い原因もありますが、中には異物の誤食、感染症、臓器不全、腫瘍や奇形など、重大な病気が潜んでいる場合もあるので注意が必要です。

特に問題の無い症状

  • 空腹
  • 食べ過ぎ
  • 消化不良
  • 不安感(恐怖感、ストレス)
  • 乗り物酔い

病気の可能性がある症状

  • 吐いたものに血がまじっている
  • 嘔吐が止まらないとき(何回も吐いてしまうとき)
  • 吐いてぐったりとしている
  • 吐こうとするのに吐けず苦しんでいる

「病気の可能性がある症状」が見られる場合は下記の病気の可能性があるため、早めにご相談ください。検査などを行い、早期に対策を考える必要があります。また、飼い主様に判断が難しい場合も多く存在しますので、ご不明な点はお気軽にご相談ください。

嘔吐の症状に潜む
病気のリスク

中毒症状/ウイルス性腸炎/細菌性腸炎/寄生虫症/胃腸疾患/肝疾患/膵炎/腹膜炎/腎不全/感染症

こんな下痢の症状があったら要注意

ひどい下痢、長期間継続する下痢、パピーやシニア動物の下痢、体力や抵抗力の弱い動物の下痢は、全身状態が悪化する場合があります。動物が下痢を起こしたら、全身状態、便の様子、食べたものをしっかり観察(出来ればメモ)し、受診しましょう。以下の症状に該当すれば、急を要するケースの可能性があります。すぐに獣医に相談しましょう。

ご相談ください

️繰り返す嘔吐下痢、といった消化器症状は放っておいても治らず、今までの治療を漫然と継続しても治らないことがあります。 肝臓の酵素が上昇している、可視粘膜(眼の白い部分や歯茎、陰部粘膜など)が黄色い(=黄疸がある)、食欲にムラがあり体重も減っているなどの症状がある場合、治療法は病気によって異なりますが、コントロールが可能な病気の可能性もあります。あるいは手術の適応である場合もあり、精密検査でわかります。 血尿、腎数値の上昇、尿がでにくい、などの泌尿器症状は単純な膀胱炎の場合もありますが、難治性の場合にはもっと重大な疾患である場合もあります。

どこまでの検査で何がわかるのか、治療法の選択肢はどんなものがあるのか、他院からのセカンドオピニオンを求めたい、外科的治療法のご相談などもお待ちしております。飼い主様の治療のご希望が第一であり、それに寄り添ったなかでの方針を提示させていただきます。お困りのことがあれば、ご相談ください。

一般的な手術から高度な手術まで対応しています

  • 門脈体循環シャント(PSS)
  • 胆嚢摘出術
  • 脾臓摘出術
  • 腸切除術
  • 腸切開術
  • 胃切開術
  • 肝生検
  • 会陰ヘルニア整復術
  • 腹壁ヘルニア整復術
  • 横隔膜ヘルニア整復術

整形・神経科

骨・関節・神経疾患を治療していきます

整形・神経科では、骨、関節、神経疾患を治療していきます。骨折や椎間板ヘルニアだけではなく、近年ではペットの高齢化にともなって腫瘍性疾患も多くなっています。足をケンケンするなどの分かりやすい症状もありますが、行動の変化だけ認められる動物もいるため注意が必要です。「変な動きをしている」「運動を嫌がっている」「お迎えに来ない」といった所見は、運動器疾患のサインかもしれません。

足を引きずる、運動したがらない場合に考えられる病気

強烈な痛みによって、急にじっと動かなくなってしまったり、食欲がなくなることがあります。抱っこしたときや、ソファから飛び下りたときに「キャン」と鳴くのも特徴的です。椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間のクッションのような役目をしてくれる「椎間板」が変質し、脊髄神経が損傷することで起こります。脊髄神経への損傷が重症だと急な四肢の麻痺を生じ、後ろ足が立たなくなったり、千鳥足の酔っぱらい歩行、ふらつき、歩行困難、起立困難、排便排尿困難などを生じる場合もあります。(麻痺がおこる部位はヘルニアを起こしている部位により変わります。)

骨にできる癌(悪性腫瘍)で、激しい痛みを伴い患部が腫れてきます。骨肉腫が発生した場所は骨が脆弱になり、ぶつかってもいないのに骨折(病的骨折)する場合もあります。骨肉腫が分かったときには、肺に転移している可能性があります。

関節の変形でおきる病気で、痛みやこわばりが出ます。歩きはじめだけ歩き方がおかしい、座り方がおかしい、関節が腫れる、足を痛がるといった症状があります。

股関節(太ももの骨と骨盤との関節)が形態異常を起こしており、ぎこちない歩き方をする、腰を振るように歩く、足を痛がる、変な走り方をする、階段の昇り降りを嫌うなどの症状が現れます。大型犬によく見られ、おもに遺伝的要因で発症すると考えられていますが、肥満や激しい運動といった要因でも発症します。

免疫機能の異常によっておこる関節炎です。関節リウマチは進行性の病気のため早期発見に努め、少しでも病気の進行を抑えることが大切です。関節リウマチは原因不明の発熱、足の痛み、食欲不振、関節が腫れるといった症状を引き起こします。愛犬に気になる症状が見られるようでしたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。

レッグペテルス病とは、大腿骨頭の血行不良によって大腿骨の骨頭が壊死してしまう病気です。仔犬が足を痛がる様子が見られたら、この病気である可能性があります。

原因不明の痛みがある場合は、打撲やケージなどの細い隙間に長時間足が挟まってしまったなど、何らかの後遺症などで神経痛が出ている可能性があります。足を噛む、足に向かって吠えるなどの症状が出ることもあります。

歯科

歯周病は歯の問題ではなく全身の問題です

歯科では主に口を気にする、口を痛がる、食べにくそうにするなどの歯や口の中の病気を治療していきます。犬や猫では歯周病を発症していることが多く、また動物の場合には口の中の状態を確認することが難しく、病気が進行していることも多いため、口元を気にする動作が見られる場合には受診しましょう。

口臭がきついと感じる場合の治療

歯石・歯垢が蓄積されると、そこから生臭いにおいが生じます。いわゆる「口が臭い」という状況です。飼い主様が最初に気づく症状として多いのは、この口のにおいです。歯周病というのは「歯の周囲の組織の病気」です。人間だと歯ぐきの炎症、歯石の細菌パワーで歯が溶けてしまうイメージだと思います。

しかし動物の場合、歯が抜けたり、歯槽骨が溶けてあごを骨折させてしまうこともあります。ご飯の量が減った場合、元気ないから・歳をとったからではなく、口内炎で口が痛くてご飯を食べにくいからかもしれません。一番知っていただきたいのは「歯周病は歯の問題ではなく身体全体の問題である」ということです。歯垢内の細菌はお口の中から全身に流れ、心臓病、腎臓病を引きと言われています。歯の健康は体の健康!動物達も歯が命なのです。口臭がきついと感じた場合は、獣医師に相談してください。

歯茎から出血している場合の治療

こちらの場合も歯周病の疑いがあります。他にも腫瘍の疑いも拭えません。歯茎に見られる腫瘍は、良性のものと悪性のものに分かれます。良性のものにはエプーリス、悪性のものには悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、線維肉腫、棘細胞性エナメル上皮腫などがあげられます。

エプーリスとは歯肉にできる良性のしこりです。犬のエプーリスは中高齢の犬での発生が多く、歯垢や歯石による刺激や歯周病の他、体質的なものが関連して発生していると考えられています。小さなエプーリスができても歯茎の腫れ以外症状が現れないことが多いですが、大きくなってくるとよだれの増加や口臭、ご飯を飲み込みづらくなる、歯にあたって出血するなどの症状が見られるようになります。

後述の悪性腫瘍と鑑別するためにも、診断や治療には麻酔下での外科切除と組織検査が必要です。良性腫瘍なので転移などは起こしませんが、放っておいても自然になくならず次第に大きくなるため、歯周病の治療と同時に切除をすることが望ましいしこりです。

歯茎に悪性腫瘍がつくられると、口臭が強くなる、よだれが多くなる、よだれに血が混じる、食欲がない、ご飯を飲み込みづらい、やせてきた、などの症状が見られます。見た目だけではどんな腫瘍なのか診断できないため、生検といって細胞診や組織診、手術する範囲を検討するための画像検査(CT検査など)が必要になります。

治療としては、腫瘍の種類や発生した場所、進行度によって選択肢は異なりますが、外科手術を中心に、補助的な治療として放射線治療や抗癌剤の投与を行います。悪性腫瘍に行う手術は、良性腫瘍のように単にしこりだけを切り取っても再発してしまうため、顎の骨まで大きく切り取る必要があります。他にも多くの病気の可能性がありますので、まずは検査を行い、早期対策を実施することをオススメします。

眼科

失明してしまう動物を減らしたい

眼科では眼が赤い、眼が開けにくそう、目ヤニがでるなどの眼の病気を治療していきます。眼の病気は急におこることが多く、中には失明につながるものもあります。症状が軽くても眼が赤いなどの症状がある場合には眼科を受診しましょう。

眼が赤い場合に考えられる病気

眼が赤い場合に考えられる病気はたくさんありますので、ここでは代表的なものをご紹介いたします。大切なことは、できるだけ早期に病院で診てもらうということです。

緑内障は人間と同じで眼圧が上がる病気です。白内障は眼が白くなるイメージがあると思いますが、緑内障は白眼の部分に充血が起き、赤らんで見えます。その他の症状としては「眼をとても痛がること」で、頭を触られることを嫌がったり、攻撃的になったり、元気食欲がなくなるといったことがあります。涙・眼脂も見られます。原因はレンズの脱臼、外傷、炎症、腫瘍などさまざまで、眼房水の流れが悪くなることに起因します。

ぶどう膜炎とは、眼球を包む膜「ぶどう膜」におこる炎症です。あまり耳にしない病気かもしれませんが、放置しておくと緑内障になる可能性も高く怖い病気です。細菌やウイルスの感染が原因でおこることが多いですが、その他の全身性疾患に続発しておこることもあります。
そして恐ろしいのが、犬の場合はちょっとした結膜炎にも続発してぶどう膜炎がおこる可能性があることです。他にも眼の病気はたくさんありますが、まずは検査をして原因を把握することが重要です。できるだけ早期に当院にお越しください。

目ヤニが出る場合に考えられる病気

目ヤニが出る場合に考えられる病気として、代表的なもので角膜炎、結膜炎、ドライアイがあげられます。角膜炎、結膜炎には眼球表面の異常、目ヤニ、赤眼、眼がしょぼしょぼするといった症状が、ドライアイにはネバネバ・ドロドロの目ヤニが出るといった症状が現れます。どの症状の場合でも言えることですが、何か異変を感じたら、できるだけ早期に病院にご相談ください。失明してしまう動物を減らしたいと考えております。

麻酔科

重症な動物に対応できる最高レベルの麻酔・集中治療管理

当院の麻酔・周術期管理は、技術レベルが極めて高いことが特徴であり、最大の強みと言えます。
当院では心臓外科手術を通じて、最重症の動物たちに麻酔をかける技術や、人工心肺装置によってダイナミックに変動する呼吸・循環・各種臓器機能を綿密にコントロールする能力が養われています。
手術技術が長けているだけではなく、重症な動物に麻酔をして集中治療管理できる専門家がいるからこそ、動物の治療が遂行できます。また、あらゆる麻酔法の中で、心臓手術の麻酔は一番難度が高いと言われています。

当院では機器材やモニタリング項目も取りそろえ、高度に修錬された複数の麻酔医・集中治療スタッフが縁の下の力持ちとして重症な動物の治療・高度医療に貢献しています。また当院獣医師は特殊鎮痛剤の取り扱いができる免許を取得しているため、強い鎮痛が必要となる腫瘍症例・手術症例・事例に使用することができます。

麻酔の必要性

手術などにより強い痛み(肉体的ストレス)が加わると、生体は痛みに対し適応しようとしますが、次第に適応しきれずさまざまな臓器の機能が失われてしまいます(ショック状態)。ショック状態にならないよう意識をなくして痛みを感じさせなくすることが、麻酔の目的です。適切な麻酔管理を行い、痛みの少ない安全な手術を実施します。

動物に検査などの処置を施すとき「動物が恐怖や不安を感じないこと」と「十分な時間じっと動かないこと」が求められます。特に外科手術を完遂するためには、手術そのものの成功だけではなく、「痛みやストレス反応を制御すること」も重要です。高度医療では、このような要求を満たしながら検査や治療を成功させるため、全身麻酔もしくは鎮静が必要不可欠となる場面があります。

麻酔のリスク

残念ながら、いかに優れた麻酔技術を駆使しようとも100%の安全性を保証できるほど私どもは自らの技術を過信してはいません。しかし、必要な処置を無事に成功させご家族様の元へ無事にお返しできるよう、動物たちにとって最も安全・安心な麻酔法・周術期管理技術を目指す最善の努力を行っています。

麻酔の種類と、使用する場面

全身麻酔は脳に作用するため、鎮静効果が生じ、麻酔をかけられた動物は眠たくなります。心臓病の手術、腫瘍摘出手術、避妊手術や去勢手術などは、全身麻酔をかけて行います。

局所麻酔は神経に作用し感覚を麻痺させます。脳への作用はないので動物は眠くなりません。体表の小さなイボを取り除くような手術で局所麻酔を使用します。

救急救命科

緊急性の高い症例の治療を最優先で対応します

緊急性が高い症例は、ご予約の有無に関係なく最優先で治療を行います。以下のような場合は急を要すことがありますので、お早めにお電話ください。

呼吸が苦しそう、息が通りにくそうな変な呼吸音がする、呼吸が早い、元気がなく苦悶の表情、チアノーゼ(粘膜が蒼白・紫色)、おすわりの姿勢のまま顎を上げ苦しそうに呼吸を荒げて眠れない、といった症状は、著しい呼吸困難(呼吸苦)の所見です。
呼吸困難所見は、重度の心臓病や呼吸器病によって窒息、肺水腫、胸水、腹水、血圧低下など生命の危機に直面している可能性が強く疑われます。日頃から安静時の呼吸数を測定し、呼吸様式も観察しておくと、役立ちます。呼吸数が1分間あたり40回以上の場合は危険なサインです。

飲みこんだ物が腸に詰まってしまうと腸閉塞になる恐れがあります。またタバコ、人間用の薬、電池、チョコレート、ネギなどを誤食してしまうと中毒症状が起こり、命の危険が伴う場合があります。他にも、骨ガムの丸飲みや、ボールなどのおもちゃの誤飲によってのどや気道が塞がれ、窒息状態となってしまうことがあるため、注意が必要です。

けいれん発作症状は数分未満で止まることもありますが、なかには長時間(30分近く)続いたり、短いけいれんが断続的に続く場合もあります。重度・長時間のけいれんは最悪の場合、命を落としたり重大な後遺症を残す危険性があるため、速やかな初期治療が必要不可欠です。
けいれん発作の原因は非常に多岐に渡ります。脳神経系の疾患(てんかん、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など)だけではなく、なかには心臓病や代謝病(高血糖症、高アンモニア血症、腎不全、肝不全、低カルシウム血症など)の場合もあり、原因究明には血液検査や各種画像検査が必須となります。

下痢や嘔吐症状を起こす病気や、嘔吐後の急変をきたすもの中には、腸閉塞(異物や腸のヘルニアかんとん)や、イレウス(消化管麻痺)、誤嚥性肺炎、神経調節性失神などがあります。
異物として飲みこんだ物が腸に詰まってしまうと腸閉塞になる恐れがあるため、大きい物やひも状の物の誤食をした可能性がある場合は注意が必要です。また、吐物を気道側に誤嚥してしまうと、重症肺炎(誤嚥性肺炎)を急激に発症し、数時間〜数日のうちに危篤化・命を落としてしまう病状に発展する場合があるため、注意が必要です。

歩き方がおかしい、びっこを引いている、片足をあげたまま、という場合は骨折が考えられます。骨折の原因は、高いところから落下した、ジャンプをしたときに着地ミスをした、滑りやすい床で転倒した、交通事故、などです。高所からの落下や交通事故で脳に強い衝撃を受けた場合も跛行を引き起こすことがあるため、精密検査が必要になる場合があります。

救急救命科からのお願い

  • ご来院に際し必ずお電話や受付にて、「動物の症状」や「緊急である旨」を遠慮なくお伝えください。速やかに対応を開始いたします。 緊急の際のお電話はこちら
  • 状況により対応できない場合があります。できましたら事前にお電話にてご連絡ください。可能な限りの最善を尽くしますが、ご了承ください。

    *例:獣医師が手術対応中で救急対応のための人数が足りない場合、緊急手術が必要だが手術室が使用中である場合、満床で受け入れ困難 など

  • 夜間救急は現在受け付けておりません。緊急時は名古屋獣医師会「名古屋夜間動物救急センター」へ連絡してください。 時間外対応について

予防・ワクチン

病気を未然に防ぐ予防医療

当院では、病気になってしまった動物を治療するのはもちろん、病気を未然に防ぐ「予防医療」にも力を入れております。病気になってから来院するだけではなく、日頃からのケアや病気にしないためのワクチン接種、フィラリア予防、ノミダニ寄生予防などの予防も動物病院で行いましょう。

ワクチンの種類について

混合ワクチンとは、一本の注射で複数の感染症を予防できるワクチンのことです。混合ワクチンで予防できる感染症の中には、致死率の高い病気や、人に感染する恐れのあるものもあります。仔犬、仔猫は特に免疫力が弱く感染症に罹患することが多いため、幼少期からのワクチン接種が推奨されます。

狂犬病は人を含めたすべての哺乳類が感染し、発病すると治療法がなくほぼ100%死亡する恐ろしい病気です。狂犬病のワクチン接種は、犬を飼う飼い主に唯一法律によって義務付けられている項目です。生後91日以上の犬は、1年に1回の予防接種を受ける必要があります。

フィラリアとは、蚊に刺されることにより寄生虫感染する病気です。フィラリアは心臓に寄生するため、発症した場合は命に関わることがある恐ろしい病気です。フィラリア予防は簡単ですが、発症してからの治療は困難であるためしっかりと予防をしましょう。犬だけの病気ではなく、猫も感染します。当院では猫の予防も積極的に推奨しています。

ノミやダニは主に屋外の植物や動物の体の表面に生息しています。ノミやダニに感染することで皮膚病(ノミアレルギー)、重篤な貧血(バベシア症)を発症することがあるため、屋外に出ることがある犬や猫はしっかりと予防しましょう。

健康診断

「ペット健診」で病気の早期発見・早期治療を

動物は人の5倍早く年をとります。当院では動物の健康維持・促進、病気の早期発見・早期治療のために、年2回の「ペット健診」を推奨しています。

ペット健診 3種類のコース

健診でわかること
  • 血球計算(全身の健康状態)
  • フィラリア検査(フィラリア感染の有無)
    ※フィラリア検査は「春のペット健診」のみ
  • 血液化学検査19項目(全身の健康状態)
  • 血球計算
  • フィラリア検査
    ※フィラリア検査は「春のペット健診」のみ
  • 血液化学検査19項目
  • 検便(胃腸疾患の検出)
  • 炎症マーカー(全身の炎症の検出)
  • 血球計算
  • フィラリア検査
    ※フィラリア検査は「春のペット健診」のみ
  • 血液化学検査19項目
  • 検便
  • 炎症マーカー
  • 甲状腺検査T4(甲状腺機能の低下・亢進)
  • 腎臓病早期発見マーカー(腎臓病の早期発見)
  • 尿検査(膀胱炎、尿路結石の検出)

ペット健診と一緒に申し込むとお得なオプション

ペット健診のお申し込みと同時に「精密検査パック」をお申し込みいただくと、割引が適応されます。

  • 歯牙口腔チェック(歯周病、口腔内腫瘍、虫歯、歯の破折 など)
  • 白内障チェック(飼い主様が見ても気付きにくい初期段階の白内障の症状チェック)
  • 爪切り(爪が伸びすぎると折れたり肉球に刺さったりするほか、飼い主様もけがをする可能性があります)
  • 外耳チェック(細菌感染・寄生虫感染・アレルギー・異物混入などでの外耳炎の発症の有無)
  • 耳掃除(耳ダニの寄生チェック、特に垂れ耳・単頭種の子は耳を定期的にチェックしましょう)
  • 肛門腺処置(肛門腺内の分泌物が出にくい子は定期的に絞ってあげる必要があります)
  • 胸部X線検査(心臓、肺、気管などの異常を調べる)
  • 心エコー検査(心臓の状態や病気の進行度などリアルタイムで確認)
  • 心電図検査(不整脈の確認・検出 など)
  • 血圧検査(心疾患、腎臓病、糖尿病などは高血圧を発症するため、血圧検査は病気の進行具合の指標になる)
  • 心臓バイオマーカー(心臓に負荷がかかった時に血液中に放出されるホルモンの濃度を測定)
  • 心臓検査報告書および対面説明
  • 腹部X線検査(肝臓、腎臓、脾臓、腸、膀胱などの異常を調べる)
  • 腹部エコー検査(各臓器の状態や病状の進行度などをリアルタイムで確認)
  • 腹部検査報告書および対面説明

避妊・去勢

望まない妊娠を避け、病気を未然に防ぐ

避妊・去勢手術を行うことで望まない妊娠を避けることができますが、この手術を受ける一番のメリットは、病気を未然に防げるところにあります。ただ、全身麻酔のリスクがあるのも事実です。

避妊・去勢で予防できる代表的な病気

メスの500頭に1頭の割合で発病するとされる、乳腺にできる腫瘍です。発病する半分は悪性、いわゆる癌です。発症には性ホルモンの関わりが重要視されています。初期発情前に避妊手術した場合の発生率は0.05%と極端に低く、1回発情後は6~8%、2回以降は25%くらいの発生率と言われます。発情がおこる回数が多いほど発生率が上がるため、乳腺腫瘍の発生を抑えるためには早めの避妊手術が推奨されます。

子宮内に進入した細菌が繁殖し、子宮に膿がたまります。これが子宮蓄膿症です。通常、膣粘膜は酸性に傾いているため細菌は進入できませんが、発情期になると卵巣からホルモンが分泌され、細菌感染による防御力が弱まって進入を許します。避妊手術では子宮と卵巣を摘出するので、この病気の発症を予防することができます。

精巣にできる腫瘍です。若い頃に去勢手術をしておくことで、発症を防ぐことができます。

前立腺の肥大が進行することで組織内にすき間ができ、そこに体液や血液が溜まってしまう病気です。去勢していない6~7歳以降のオスは、前立腺肥大が発症しやすい傾向にあります。